2020年上半期に突如として世界を襲った新型コロナウィルス感染症(COVID-19)。この新しい感染症の特徴により、これまで当たり前にできていた「人と会うこと」自体が感染のリスクとなる時代が来てしまいました。新型コロナウィルスは「人と人の関係性を分断する」ウィルスであり、それは日常生活のみでなく、性の健康においても同様のようです。そんななか、2021年6月にイタリアのローマで、COVID-19後にセクシュアル・プレジャーをどう取り戻すか?をテーマとしたイベントが開かれ、同時に新団体が発足しました。イベントに携わったStefano Eleuteri(ステファノ・エレウテリ)氏にお話を聞きました。
コロナ終息後を見据えたイベント
ーーどういうイベントだったのでしょうか?
「新型コロナウィルス感染症(COVID-19)後の世界でセクシュアル・プレジャーを取り戻す」というタイトルのイベントで、6月14日(月)の19:00から、会場を無料で提供してくれたある団体のスペースでオフライン式でおこないました。
ーーどういう内容だったのでしょうか?
19:00から私が「COVID-19に関連する性的な問題を心理学的な視点からどう克服するか」をテーマについて話しました。
19:30からはAntonio Colasanti(アントニオ・コラサンティ)氏が「性の問題に対する薬理学的アプローチ」というテーマで話しました。
20:00からは、参加者からの質問やコメントの時間になりました。質問をしやすくするため匿名で質問を書いて箱に入れてそれに答えるという方式を取りました。
ーーどれくらいの人が来たのでしょうか?
20人くらいの人たちが来ました。今イタリアではコロナの関係で規制がかかっていて、大規模なイベントを開くことができないんです。来てくれた20人の人たちはSNSの告知でこのイベントを見て来てくれました。規制の関係で事前予約が必須でしたが。
ーーイベントを終えてどうですか?
とても満足です。久しぶりに対面式のイベントを開催することができました。参加してくれたみなさんが興味を持ってくれて、質疑応答の方法にも満足してくれたようです。
今回イベントをやってみて、一般の方々の関心が高いことがわかりました。
また、軽く飲食できるようなものを提供することで、こういったテーマのイベントであっても、堅苦しくなく過ごしやすい時間を作ることができたと感じています。
健康をサポートするための新団体も設立
ーー同時に新しい団体を設立したということですが、どういう団体ですか?
心理的ならびに性的なwellbeing(幸福、良好さ)の向上を目的とした団体です。
今の時点では、さまざまな異なる専門分野(性科学、家族療法、腫瘍学など)を持つ5人の心理学者と心理セラピストが参加しています。今後、理学療法士、ロゴセラピスト、骨盤底筋リハビリテーションなど他の専門家も巻き込んで、あらゆる角度から人の健康をサポートしていきたいと考えています。
ーーどういう経緯でその団体は作られたのですか?
別々の民間組織で活動するスペシャリストである私たちですが、一緒に仕事をするなかで、目的や視点が同じであることを理解し、自分たちのビジョンを実現するために、何か新しいことを始めようということになりました。その結果新団体の結成に至りました。
ーー今後はどういうふうに活動していく予定ですか?
今年(2021年)9月からはイベントを頻繁に開催し、さまざまな専門分野の人たちにも参加してもらいたいと思っています。特に、ストレスマネジメントや瞑想のグループ活動を企画していきたいと思います。これらの側面は今の時代にはとても重要なことだと考えています。
後記
コロナ禍で性に関する領域にも大きな影響が出たことは日本だけでなく世界に共通する出来事ですが、コロナ収束後を見据えたこうしたイベントが少しずつ行われるようになってきた2021年です。ステファノ氏には今後も9月以降に開かれるイベントの話を聞いていこうと思います。
性の健康イニシアティブ立上げ人/代表・Sexual Health NAVI編集長
2002年より性の健康などの領域で活動。2004年には国際人口開発会議(カイロ会議、1994年)から10年を記念する国際会議ICPD+10にユースとして参加。2012年からWAS(世界性の健康学会)の活動に参加するようになり、同年から同学会の公式委員会Youth Initiaitive初の日本人メンバー(~2019年)。国内では世界性の健康デー東京大会の運営に2012年より参加し、現在は実行委員長も務める。2019年に世界性の健康学会から発表された「セクシュアル・プレジャー宣言」の公式翻訳チームのメンバーも務めるなど、性の健康やリプロダクティブヘルスの領域で国内外で長年活動している。