国際女性デー(3月8日)に合わせフラワーデモが開催される

国連が1975年に制定した「国際女性デー(International Women’s Day)」(3月8日)に合わせ、2021年3月8日午後、霞が関の旧法務省(赤レンガ棟)前でフラワーデモ(呼びかけ人:北原みのり)が行われました。

性暴力の被害者や、性暴力の撲滅を訴える活動家など約100名が集い、刑法における①性交同意年齢(13歳)の引き上げ、②強制性交等罪の暴行・脅迫要件の見直し、③地位・関係性を利用した性暴力の犯罪類型の新設の必要性を訴えました。

これらは現在、法務省の検討会議で議論が行われており、3月8日のフラワーデモの当日にも検討会議が開催されました。

詳細はこちらも参照してください。
一般社団法人Spring「見直そう!刑法性犯罪~性被害当事者の視点から~
(外部のサイトに飛び、PDFが開きます)

2019年4月に始まったフラワーデモは、現在までに全国各地で実施されています。このフラワーデモは、別名「サイレントデモ」と呼ばれ、拡声器やプラカードなどを持ち声高らかに民衆に訴えるような通常のデモとは異なります。花を身に着け、メッセージの書かれた紙や横断幕を広げ、「無言」で性暴力に抗議しているのです。

性の健康で読み解くニュース解説

日本の性交同意年齢は妥当?

性交同意年齢とは、法律で性交同意能力があると認められる年齢を指します。日本を含む世界の国で性交同意年齢が定められています。

世界各地の性交同意年齢
18歳 アメリカ
16歳 カナダ イギリス ロシア フィンランド 韓国
15歳 フランス スウェーデン
14歳 ドイツ イタリア
13歳 日本

現在、日本では性暴力被害者が13歳以上の場合、暴行脅迫が明確に証明されなければ、性交同意が成立しているとみなされ、仮に性的暴力を受けたとしても強制性交が認められないということになります。

学習指導要領で決められたルールのせいで「性交」という言葉を使えず、性教育が十分にされているとは到底言えない日本において、13歳という義務教育課程にあるこどもが、性交同意能力が備わっているとしている「性交同意年齢」、国際的に比較しても明らかですが、果たして合理性があると言えるでしょうか。そして、民法で定められている婚姻適齢と比べて明らかに早すぎるのではないでしょうか。

強制性交等罪の「暴行・脅迫」要件と不同意性交等罪

現行の法律では、同意しない性行為を強要された場合でも「抗拒不能」という要件を満たさない限り、性犯罪として立件できません。抗拒不能とは、身体的または心理的に抵抗することが著しく困難な状態を指します。例えば、手足を縛られていたり、酩酊していたり、高度の恐怖や錯誤に陥っているなど、意思決定の自由を奪われている状態です。

しかし、近親者や知り合いなどに「同意」なしに行われる強制性交が圧倒的に多いのが現実です。内閣府「男女間における暴力の調査(平成29年度調査)」によれば、無理やりに性交等されたことがあった人と加害者との関係は、「配偶者(事実婚や別居中含む・元配偶者(事実婚を解消した者を含む)」、「交際相手・元交際相手」が23.8%、「職場・アルバイト先の関係者(上司、同僚、部下、取引先の相手など)」は14.0%となっています。「まったく知らない人」は11.6%にとどまっていることから、約90%は面識があるということになります。

例えば、世話になっている人から無理やり性交を強要され関係を壊したくなくて仕方なく応じた場合、「抗拒不能」要件は満たされず、強制性交には当たりません。つまり、「激しく抵抗しなかった、逃げることができた」状況では、意思決定の自由がある中、互いに「同意」のもと行われた性交とみなされてしまうのです。

強制性交等罪に代わる新たな刑法案として「不同意性交等罪」の創設を求める動きがあります。強制性交等罪は、NOを明確に示せなければ性交に同意したとみなされ、強制性交に当たらないと考えます。他方で、新たに創設が求められている不同意性交等罪は、「YES MEANS YES」すなわちYESが明確に示されている性交以外は性暴力であり、犯罪であると考えます。このように、NOを明確に言えなければ同意したことになる(強制性交等罪)から、YESが明確に示されない限り性暴力(不同意性交等罪)という形に法律の性質を変えようという動きが起こっています。

地位・関係性を利用した性暴力の犯罪類型の新設

アメリカでは2017年映画プロデューサーによるセクシュアルハラスメントの告発をきっかけに性被害経験のある人々が次々と「#me too  (私も)」と声を上げ大反響を巻き起こしました。

日本でも上下関係や利害関係などを利用した性暴力で苦しんでいた人たちが立ち上がった#me too 運動。同年、フリージャーナリストの伊藤詩織さんが準強姦容疑で警視庁に被害届を出しましたが、被疑者逮捕の直前に嫌疑不十分で不起訴となりました。その後、伊藤詩織さんは民事裁判で損害賠償を求めることとなります。

国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ「性犯罪に関する各国法律制度調査報告書」(外部のサイトに飛び、PDFが開きます)に詳しく載っていますが、海外には地位や関係性を利用した性暴力の処罰規定がある国も存在します。国により具体的な規定の在り方は様々ですが、根底にある「自身の社会的な地位や立場を濫用して性的関係を強要することを処罰する」という点は共通しています。日本でも、同様の法律の新設が急がれます。

「あなた」が今日からできること

対人援助者のみなさまへ

性暴力というと「夜道で知らない人に後ろから襲われて」という状況をイメージすることもあるかもしれませんが、上記で紹介した通り、そのほとんどは顔見知りの人からの被害です。性暴力を取り巻く日本の法律の在り方やそこから生み出される現実について知ること、そして知ったことを支援の現場に反映していくことで、性暴力を許さない社会が少しずつできていくのではないかと思います。

議員のみなさまへ

性交とは、自らの性欲を満たすためだけの行為ではありません。大切な誰かと身体の繋がりを求め、関係を良好なものにするための行為です。誰かの犠牲の上には成り立たちません。人間関係を良好なものにするためは、自由な意思決定を尊重し、維持することに努めなければいけません。そのために「同意」というコミュニケーションがなされているかを重視する新たな法の存在が求められます。性暴力を取り巻く日本の法律が生み出される悲しい現実をこれ以上繰り返さないためにも、この記事で紹介した法律の見直しや新設をお願いいたします。

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