性科学(せいかがく)。人間の性を科学する学問があります。人間の性は、医学のほか社会学や心理学など様々な側面から探求することが可能であり、極めて学際的な学問であると言えます。そしてその性科学の研究者は性科学者(せいかがくしゃ)と呼ばれます。英語ではsexologist(セクソロジスト)です。
性科学は日本ではまだ知られていない学問分野であり、性科学を学べる大学もありません。他方、世界には性科学を専攻できる大学があります。近年日本でも性教育ブームが起こっており、高校生から「性科学を学びたいがどうすればいいか」という声も聞かれるようになりました。
日本の性科学は、2021年7月現在、そのような現状ですが、中南米では少し様子が違うようで、なんと「 International Day of The Sexologist(国際性科学者の日)」が制定されたというニュースが飛び込んできました。
この記事では国際性科学者の日のコーディネートをしている団体「SexologxsMx」からの情報をお伝えします。
ーー国際性科学者の日を制定した目的はなんでしょうか?
The SexologxsMx Network(メキシコ性科学者ネットワーク)は、その結成以来、メキシコにおける性科学者の活動を可視化することを目的としてきました。私たちの活動が何であるかを世界に知ってもらい、私たちが包括的な性教育を推進する最前線にみんなで立っていることを示す先例を作ることを目指してきました。性科学者である私たちが何をやっているのかを可視化し、私たちが何をしているかを認識してもらうために、国際性科学者の日を制定したのです。
ーー国際性科学者の日はどのように制定されたのでしょうか?
2020年6月23日にThe SexologxsMx Network(メキシコ性科学者ネットワーク)が性科学者のコミュニティに「国際性科学者の日」の制定を提案しました。その提案を受けて、6月29日がその記念日として選ばれました。
6月29日は、1997年6月29日にスペインのバレンシアで開催された第13回世界性科学会議において、「性の権利宣言」が行われた日と一致していることから、この日が選ばれました。
そこで、FacebookやInstagramなどのソーシャルネットワークを通じて中南米の性科学の専門家にアンケートを実施し、「この日を制定することが自分たちの存在をアピールするための適切な方法であるかどうか」、また「各人が性科学の仕事で経験する困難」について意見を聞きました。このアンケートは、メキシコ、アルゼンチン、ブラジル、スペイン、チリ、コロンビア、パナマ、ベネズエラ、プエルトリコ、ウルグアイからの202人が回答しました。
ーー国際性科学者の日は性科学者だけのものなのですか?
セクシュアリティの研究をしている人、セクシュアリティの教育を広めようとしている人は誰でもこの日に参加できます。
ーー国際性科学者の日にはどのようなことをするのでしょうか?
2021年は、国際性科学者の日が制定されたというニュースを発表し、Facebookのフレームワークを作成して、自分が性科学者であると認識しているすべての人々に、この日を広めるために利用してもらいました。来年以降は、この日を祝う理由を与え、オンラインやオフラインで何かしらの活動をしたいと思います。事前にアナウンスをすることで、より多くのスペシャリストが参加してくれるものと考えています。
国際性科学者の日は今年2021年にスタートしましたが、これからも毎年、世界中の性科学者がこの日に参加するように輪を広げていきます。オンライン・オフラインを問わず、性科学者の仕事に関連した活動を行います。また、性科学者の集まって参加できるような活動も開始します。もちろん、私たち性科学者の仕事を祝う日なので、パーティーも行います。世界中の性科学者のために、性科学者によるこの日を作りましたので、メキシコやラテンアメリカ以外の地域の性科学者の参加も歓迎です。
ーー国際性科学者の日があることでどんな効果があると考えていますか?
このような記念日を作る必要があると思うかを同僚に尋ねたところ、93%が「はい」と答えました。この記念日を通じて私たちが強調したいのは、性教育は、性的な話といえばとかく連想されやすい、エロや性交の側面を超越して、人々の人生のあらゆる側面をカバーしているのだということです。
ーー国際性科学者の日のためにどんなことをしていますか?
今年始まったばかりの記念日なので、今年は性科学者の集まりの中でこの日を目立たせることだけを考えてスタートしましたが、将来的には、もっと多くの国でこの祭典が開催されるように、もっと存在感を発揮していきたいと思っています。
参考)
スペイン語でいくつか記事が出ているとのことです。
29 de junio, Día Internacional de las Sexólogxs(InformativoQ NOTICIAS)
Respaldan 10 países, 29 de junio, Día Mundial del Sexólogo y Sexóloga(todotexcoco.com)
日本ではまだ一般的ではない性科学、性科学者ですが、メキシコやラテンアメリカではこうして盛んに活動をしている例もあります。本メディアSexual Health NAVIでは来年以降もこの「国際性科学者の日」について取材したいと思います。また、(本メディアを運営する)性の健康イニシアティブでは、来年以降「国際性科学者の日」に参加していく予定です。
編集部注(2022年2月6日記):
本文中に出てくる「性の健康イニシアティブ」は、2022年2月に「性の健康イニシアチブ」に名称を変更いたしました。
性の健康イニシアティブ立上げ人/代表・Sexual Health NAVI編集長
2002年より性の健康などの領域で活動。2004年には国際人口開発会議(カイロ会議、1994年)から10年を記念する国際会議ICPD+10にユースとして参加。2012年からWAS(世界性の健康学会)の活動に参加するようになり、同年から同学会の公式委員会Youth Initiaitive初の日本人メンバー(~2019年)。国内では世界性の健康デー東京大会の運営に2012年より参加し、現在は実行委員長も務める。2019年に世界性の健康学会から発表された「セクシュアル・プレジャー宣言」の公式翻訳チームのメンバーも務めるなど、性の健康やリプロダクティブヘルスの領域で国内外で長年活動している。