緊急避妊薬の薬局での購入は女性の健康と権利にとって重要

2020年10月、日本政府は緊急避妊薬を薬局で買えるようにするための検討をすると表明しました。 

出典:緊急避妊薬、薬局で購入可能に(共同通信社)

緊急避妊薬は2011年の認可以来、医師の処方箋を必要とする処方薬として扱われてきました。その名の通り、妊娠したかもしれないという緊急事態の直後に飲むことで効果を発揮する、避妊の最後の砦と言ってもいい薬剤です。

そのような薬剤が処方箋を必要とすることから、アクセスのハードルを上げ、入手までに時間を要し、避妊へのアクセスを遅らせてきた側面がありました。処方箋無しで薬局で買えることになれば、こうした問題を解決し、女性の健康と権利のための大きな一歩となるでしょう。

性の健康で読み解くニュース解説

基本的人権としての女性の権利

女性の身体権・性的自己決定権という考え方があります。「自分の体は自分のもの」という言葉で表現できる、基本的人権のひとつです。こどもを「産むか産まないか、産むならいつ、どこで産むか、何人産むか」は女性が自身のライフプランとして決めるものと考えられるようになりました。

緊急避妊薬は72時間以内に飲むことで効果を発揮

緊急避妊薬は性交後72時間以内に内服することで、予期せぬ妊娠を防ぐことが可能となる薬で、できるだけ早く内服するほうがよいとされています。日本では現在、医師の処方箋が必要な薬となっています。例えば金曜日の夜にこうした緊急事態が起こり、土曜日・日曜日が病院の休診日、月曜日も祝日で休診だったとしたら…と考えると、薬局で手に入れられるようになることの意義は大きいと言えます。緊急避妊薬の存在は女性の自己決定権をアシストする存在となるでしょう。世界を見渡すと既に薬局で廉価で手に入れることのできる国も多くあります。

突然訪れた今回の検討開始

緊急避妊薬を薬局で購入できるようにすること(OTC化)に向けては、かねてより民間団体が署名活動等を行い申し入れをしてきました。このたびの発表は民間団体で活動してきた人たちにとっても寝耳に水といっていい急な一報となりました。

民間団体の努力が政府を動かしたと推測

内閣府男女共同参画局において、2020年(令和2年)10月8日に開催された第5次基本計画策定専門調査会(第7回)の資料として提出された「第5次男女共同参画基本計画の策定に当たっての基本的な考え方」(案)の78ページに「処方箋なしに緊急避妊薬を利用できるように検討する」という記載が見られます。この記載は同資料が7月に素案として作成された際には見られませんでした。政府が突然の検討を表明した(10月7日)翌日、この資料に基づいた専門調査会が実施されています。政府の意向を受けて急遽資料が追記されたものなのか、この資料があったからOTC化の検討を政府が表明することになったのかは判然としませんが、いずれにしろ7月作成時点にはなかった緊急避妊薬のOTC化の記述が10月作成時点の資料に盛り込まれたことは民間団体の活動の賜物であると推測することができます。

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