女性の自立が奪われる構造

ジェンダーバイアス(gender bias)とは、男性や女性に関する固定的な観念のことを言います。社会からの特に女性に対する評価や扱いが差別的であることを指してジェンダーバイアスという言葉が使われる場合もあります。

例えば「女の子のおもちゃはぬいぐるみで、男の子のおもちゃはロボット」という単純そうに見える話はジェンダーバイアスの最たる例と言えます。

これが高じると女性の自立が奪われることになります。どういうことなのか、その構造 をまとめました。

ジェンダーバイアスの結果、経済的自立を阻まれる女性

「結婚したら、男性は外で働いて家族を養い、女性は家事と育児を担う」という固定観念もまた、ジェンダーバイアスのひとつです。

近年でこそ夫婦共稼ぎの家庭は増加の一途をたどっていますが、かつての日本では「外で働く男性と家事育児を担う女性」の組み合わせの夫婦が多数派という時代がありました。この結果起こったことのひとつが、女性の社会参加の機会が減少するということでした。

女性の参加の機会が奪われやすい社会になると、どんどん男女の賃金格差が大きくなります。この賃金格差は、男性に養ってもらわなければ生きていけない女性を増やし、女性の自立する機会を奪ってしまいます。日本においては未だこのような男女格差が解消されておらず、(特にこどもがいる)既婚の女性では顕著に現れ、専業主婦と呼ばれる夫に養われる女性が沢山います。

ジェンダーバイアスの結果としての賃金格差とDV

経済的な自立ができない女性は社会的弱者といえます。養われているという身分から生じる男女のパワーバランスの不均衡で家庭内暴力(DV)が起きてしまうことも多々あります。ジェンダーバイアスが男女格差を生み、さらには女性の経済的社会的自立の機会を奪い、時にはDVの被害者になるかもしれない事例もあるのです。

ジェンダーバイアスは意識することで断ち切れる

社会のなかや私たちの意識の中に、根深く刻み込まれているのがジェンダーバイアスです。両親が話し合う姿を見たことのない子どもが話し合いの苦手な大人に育つように、怒鳴って手を挙げるばかりの両親に育てられた子どもが暴力的な大人になってしまうように、人は親や周囲からされたことをロールモデルにし、されなかったことは想像も実行もできないものとして処理します。

社会も親世代も、根深く刻み込まれたジェンダーバイアスに絡めとられていました。その影響を受けて育った子ども世代もまたジェンダーバイアスに絡め取られている可能性が高いです。この連鎖はどこかで意識的に断ち切らないと、子ども世代・孫世代にも同様のものを引き継いでしまうでしょう。

逆に言えば、意識して断ち切れば、ジェンダーバイアスに縛られないもっと良い社会がくるということでもあります。日常のふとしたことにアンテナを立て続け、「これっていいのかな」「これはおかしなことじゃないかな」と問うてみる。その繰り返しで、おかしなものに対する感覚が少しずつ研ぎ澄まされていきます。

「男女を入れ替えた時にその話が成り立つのか」を考えてみてください。もし成り立たなければ、そこにはジェンダーバイアスが潜んでいます。例えば「老後の面倒を看てもらうために娘を産んだ」と言われたら「私が息子なら老後の面倒を看なくていいの?」と聞いてみる。すると「老後の面倒を看てもらうために娘を産んだ」という言葉のおかしさに気付くでしょう。こういうことの積み重ねがジェンダーバイアスを断ち切る端緒になります。

プロフェッショナルとしても生活者としても、感覚を研ぎ澄ませておかしなものに気付く力を持っておくことは重要ですし、おかしいものをおかしいと感じられることで目の前の被援助者への対応もよりよいものにできると思います。

ジェンダーバイアスチェックシートを配布しています

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