性教育は性欲を語らないわけにいかない

性教育ではあまり深く語られない「性欲」。ですが性欲を理解することで自らの欲求と向き合い、よりよい性的な経験に繋がることが期待できます。性について語る人が「性欲」を語らないわけにはいきません。

性欲は本能か?

よく3大欲(食欲・睡眠欲・性欲)の1つとして性欲が語られますが、実は単なる本能だと割り切ることはできません。性欲とは、自分の性的欲求が満たされることを期待する精神状態を指します。つまり、性的欲求そのものではないことから「性衝動」という表現が適切かもしれません。そして、性衝動が引き起こされるメカニズムは非常に複雑なものであることが解明されています。

人間のセックスの仕組み

動物のセックスは性ホルモンに支配されており、発情期が存在しますが、人間には発情期はありません。

人間がセックスをする場合、視覚、聴覚、触覚などの外的刺激、妄想や記憶などを大脳皮質の前頭葉が受け取り、視床下部に情報を与えることで性ホルモンが分泌され、性欲が生じます。そのうえで自律神経の働きでペニスの勃起や、膣分泌液の増加が起こり、挿入を伴う性的行為が可能となります。人間によるセックスとは複雑かつ極めて高次元なものと言えるでしょう。

「欲」を理解することで人を理解する

性の健康を推進する際には、人間を理解することが欠かせません。その理解の一助となるのは、「性欲」をはじめとした「人の欲」への理解ではないかと思います。

よく思われたい、かっこつけたい、楽したい。人の様々な欲は論理的でも合理的でもない行動を引き起こします。そこに、機械にはない人間の無理・無駄・ムラ、人らしさのようなものが感じられます。

そのような「人らしさ」が、性行動も含めた人間の行動をより豊かなものとするのだと思います。「欲」が注目されることは多くはありませんが実は重要な観点であり、「性欲」というものにも更なる着目があって然るべきであるように思われます。

人はいつ「性欲」について学ぶのか

では、性欲、性行動について、いつ誰が教えてくれるでしょうか。少なくとも現状の性教育で語られる機会はそう多くありません。

性欲の発生時期には個人差はあるものの、第二次性徴が起こる頃、性ホルモンの分泌に合わせて性欲の高まりを自覚し始めるケースが多いです。にも関わらず、性欲を自覚した時、どう捉え、どう付き合っていくかについて誰からも教えてもらう機会がないという事実は、特に第二次性徴を迎えた年代にとって困難な状況を招くようにも感じられます。

性欲は自然に湧き上がってくるもので、恥ずかしいものではありません。性欲の存在を否定せず肯定的に捉えられるようになることが、自らの性を肯定的に捉え性的な経験を豊かなものにするためにも重要なのです。

だから、自らの性欲と向き合うこと、性欲が起こるメカニズム、性行動の方法を伝えることは、性感染症や避妊、性的同意について扱うことに匹敵する、性教育の重要トピックではないでしょうか。

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