いま性に関することに携わっているなら読んでおきたい

専門家や活動家と呼ばれる人々にとって、最新の知識や情報を常にアップデートすることはとても大切なことです。知識をアップデートするだけでなく、トレンドや新しく世に出た情報を押さえておくことも同時に重要な仕事になります。

また、初めて性教育や性科学の道に足を踏み入れ右も左も分からない時に、現在のトレンドを押さえ、地図になるような基礎知識を手にすることができる本があれば、入門書として持って来いだといえるでしょう。

もしそれらが1冊の本で叶うとしたら、魅力的ではありませんか?今回ご紹介する『性科学ハンドブック vol.13 岩室紳也と早乙女智子のもっと知りたい性のこと』(2020年 日本性教育協会 刊)はうってつけの1冊でありましょう。

本のあらまし

日本性教育協会(JASE)の性科学ハンドブックの第13弾として刊行された本書は、泌尿器科医の岩室紳也氏と、産婦人科医であり本メディアの監修者でもある早乙女智子氏の共著となっています。

日本性教育協会(JASE)が月1回発行する『現代性教育研究ジャーナル』の2014年4月号~2017年3月号に連載された「もっと知りたい女子の性/もっと知りたい男子の性」を再構成する形で書籍となった本書には、著者である両氏それぞれの視点、それぞれの立場からの言葉が紡がれています。

3部構成で、1部は「多様な性」、2部は「女性の性」、3部は「男性の性」に分かれており、数ページだての複数の記事が各部の中にまとめられています。最初から順に通して読むこともできますし、気になる部、あるいは気になる個別記事から読んでいくことも可能です。

2020年の必読書

第1部の「多様な性」においては、性を科学する難しさの話、生物人口学の話にはじまり、様々なセクシュアリティの話やジェンダーバイアスとジェンダーギャップの話など、2020年だからこそ押さえておきたい性の様々な話題が満載です。

また、2020年に世界を揺るがせた新型コロナ(COVID-19)、2019年10月に世界性の健康学会から提唱された「セクシュアル・プレジャー宣言」に関連する話題にも触れられており、性に携わる活動をしている専門家や活動家にとって、本書は2020年に読んでおきたい必読書だと断言したいところです。

著者それぞれの視点の違いを楽しむ

岩室氏の書いた数ページの記事と、早乙女氏の書いた数ページの記事が、交換日記のごとく交互に、あるいはどちらかの記事が連続して、登場するところに本書の面白さがあります。

両氏の親交は古く、書籍『LOVE・ラブ・えっち』(2001年 保健同人社 刊)をはじめ、これまでにも多くの場で共著や共演(講演会など)の機会がありました。

泌尿器科医と産婦人科医という専門分野の違いや、かたやコンドームの達人であり、かたや避妊も感染症の予防もコンドームでは不十分と考えているなど考え方の違いもあるおふたりが、各々に大事にしている主張を繰り広げながら、それでも不思議な重なり合い、絶妙なハーモニーを奏でているのが本書の魅力です。

視点の違いを楽しむとともに、「不思議な重なり合い方」にも注目してほしいと思います。

2021年になっても間に合います

東京を中心に日本で様々な人が性教育の活動を志すようになり、性科学にも目が向けられるようになりました。共著者のおふたりは長らく性科学や性教育の分野に携わってきたエキスパートであり、そのおふたりの考えが2020年仕様で短く読みやすく再編集されている本書は数時間の読書で多くの気づきを得られることでしょう。さながらおふたりから届いた「ラブレター」のつもりで、おふたりを知らない方も是非一読されることをオススメします。

もちろん、2021年になっても読み続けられて欲しい1冊です。未読の方はぜひご一読ください。一般書店での販売はされていませんので、ご購入は日本性教育協会のホームページよりよろしくお願い致します。詳しくはこちらから。

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